
先週7月16日から公開された、
スタジオジブリの最新映画
「コクリコ坂から」。公開前は、監督の前作の評価の事もあって映画・アニメファンの不安の声も囁かれていた作品だったが、蓋を開けてみると素朴で温かいストーリーや優しい絵柄が好感を呼び、映画ファンの評価も今のところ上々に思える。
この映画は横浜が舞台に描かれていることから、映画公開の7月16日には横浜市長も自ら「JR桜木町」駅前で映画と横浜のPR活動を行ったという。
しかし、作中で描かれているのは、現在の横浜ではなく
「古きよき横浜」だ。
映画の舞台は1963年、東京オリンピック前の横浜である。港を行き交う船、赤白のマリンタワー、路面を走る市電、古い桜木町駅・・・現在の開かれた
「みなとみらい」しか知らない人たちにとっては見たこともない風景だろう。
筆者は横浜生まれ、横浜育ち。1963年はまだ生まれる前だが、それでも「子供の頃に見たことがある横浜」をこの作品の中にたくさん見る事が出来た。ストーリー自体も思春期を思い起す切なさや優しさに満ちていたが、「横浜」を知っている者にとっては、また違う感慨がある。
ジブリアニメは郷愁感誘われるのも特徴の一つだが、そういう意味で筆者にとってこの作品は何度も涙誘われる映画となった。作中にも「古きよき物を壊さない」下りがあるのだが、まさにこの映画の中には失われた横浜の姿がある。
横浜に生まれ育ち、「みなとみらい」で開発前の横浜の風景を知っている世代に、大いにお薦めしたい作品だ。

(文:久風子)