2011年7月20日水曜日
【映画「コクリコ坂から」に見る懐かしい横浜港】
先週7月16日から公開された、スタジオジブリの最新映画「コクリコ坂から」。公開前は、監督の前作の評価の事もあって映画・アニメファンの不安の声も囁かれていた作品だったが、蓋を開けてみると素朴で温かいストーリーや優しい絵柄が好感を呼び、映画ファンの評価も今のところ上々に思える。
この映画は横浜が舞台に描かれていることから、映画公開の7月16日には横浜市長も自ら「JR桜木町」駅前で映画と横浜のPR活動を行ったという。
しかし、作中で描かれているのは、現在の横浜ではなく「古きよき横浜」だ。
映画の舞台は1963年、東京オリンピック前の横浜である。港を行き交う船、赤白のマリンタワー、路面を走る市電、古い桜木町駅・・・現在の開かれた「みなとみらい」しか知らない人たちにとっては見たこともない風景だろう。
筆者は横浜生まれ、横浜育ち。1963年はまだ生まれる前だが、それでも「子供の頃に見たことがある横浜」をこの作品の中にたくさん見る事が出来た。ストーリー自体も思春期を思い起す切なさや優しさに満ちていたが、「横浜」を知っている者にとっては、また違う感慨がある。
ジブリアニメは郷愁感誘われるのも特徴の一つだが、そういう意味で筆者にとってこの作品は何度も涙誘われる映画となった。作中にも「古きよき物を壊さない」下りがあるのだが、まさにこの映画の中には失われた横浜の姿がある。
横浜に生まれ育ち、「みなとみらい」で開発前の横浜の風景を知っている世代に、大いにお薦めしたい作品だ。
(文:久風子)
2011年7月6日水曜日
【スピルバーグの世界を懐かしく楽しむ『SUPER8』(スーパーエイト)の魅力】
『「趣味は映画を見る事」と履歴書に書いて「スピルバーグが好きです」と言うと、「こいつ、どうせスピルバーグしか知らないんだろ」と思われるから止めた方がいい。』という話を聞いた事があるが、スピルバーグが好きで何が悪い。筆者はスピルバーグが好きである。
・SUPER8 公式サイト (2011年6月24日より全国絶賛公開中)
(文:久風子)
スピルバーグの世界には、どこかしら救いがある。それは、「ET.」のようなファンタジー系の作品のみならず、「シンドラーのリスト」のような社会派作品、「ポルターガイスト」のようなホラーでさえそうなのだ。ラストにホッとできる甘さがある。
また、スピルバーグの世界には夢がある。大人不在の中で成長していく子供が描かれることが多いのもスピルバーグ作品の特徴の1つだが、その過程で現われる不思議体験が、何故か見る者の郷愁を誘うのである。
「SUPER8」の中でも、子供たちは子供たちの世界の中で成長を遂げていく。作品の中で起こる様々な出来事は誰しも体験できるような事ではないけれども、みんなで何かに夢中になったり、親に内緒で何処かに出かけたり、そんな体験は懐かしく思い出す事が出来る。
「未知との遭遇」「ET.」など、スピルバーグの昔のSFファンタジー作品を愛する人たちは、この作品の中に「懐かしいスピルバーグ」をたくさん見つける事が出来るだろう。
「スピルバーグが好き」という貴方こそが心から楽しめる1本。監督・脚本のJ・J・エイブラムスが愛するスピルバーグの世界を再現した1本。「SUPER8」は、そんな映画だった。
・SUPER8 公式サイト (2011年6月24日より全国絶賛公開中)
(文:久風子)